大学入学共通テスト(理科) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問132 (生物(第3問) 問1)
問題文
マウスの前肢と後肢やニワトリの翼と脚など、四足(四肢)動物の肢は、肢芽と呼ばれるふくらみから形成される。肢芽は、胚の前後軸に沿った特定の部位に移動してきた側板由来の細胞が、表皮に覆われて形成される。形成された肢芽は伸長し、外胚葉と中胚葉の相互作用によって、それぞれの部位に特有の肢を形成する。このことを学んだミハルさんとヒデヨさんは、この仕組みについて議論した。
ミハル:肢芽がそもそもからだのどこに形成されるかは、どのaホックス(Hox)遺伝子がどの体節で働くかによって決まっているそうだよ。
ヒデヨ:だから、同じ鳥類でも、Hox遺伝子の発現の場所が異なることで翼が生じる場所が変わるから、首が長いものと短いものとがいるんだね。
ミハル:Hox遺伝子の発現する場所が変化しなくても、Hox遺伝子によって直接的または間接的に制御される遺伝子の発現や働きを変えることでも、肢芽が本来とは別の場所に形成されたり、その肢芽が翼や脚を形成したりしそうだよね。
ヒデヨ:それは面白そうだね。そういう論文があるか、図書館で調べてみよう。
ミハルさんとヒデヨさんは、図書館に行って、ニワトリ胚の肢芽で外胚葉と中胚葉の相互作用を変化させた実験1〜3を行った論文を見つけた。
実験1
肢芽が途中まで伸長した段階で、肢芽の先端の表皮を除去したところ、肢芽の伸長は停止した。しかし、表皮を除去した肢芽に、肢芽の先端の表皮から分泌されるタンパク質Wを染み込ませた微小なビーズを埋め込んだところ、肢芽は正常に伸長した。
実験2
本来は肢芽を形成しないわき腹の表皮の下に、タンパク質Wを染み込ませた微小なビーズを埋め込んだところ、わき腹に新たな肢芽が形成された。新たに形成された肢芽は、翼になる肢芽の近くにあると翼を、脚になる肢芽の近くにあると脚を形成した。
実験3
翼になる予定の前方の肢芽と脚になる予定の後方の肢芽との間で発現に違いのあるタンパク質を探したところ、前方の肢芽の側板由来の細胞から調節タンパク質Xが、後方の肢芽の側板由来の細胞から調節タンパク質Yが、それぞれ見つかった。実験2と同様にわき腹の中間に形成させた新たな肢芽で、調節タンパク質Xまたは調節タンパク質Yを発現させたところ、肢芽はそれぞれ翼または脚を形成した。
ヒデヨ:論文を読むと、b外胚葉と中胚葉の相互作用が変化することで2対の翼や2対の脚を持つニワトリができるのだから、形態形成の過程は想像以上に柔軟だということが分かるね。そういえば、この相互作用が邪魔されて2対の後肢が生えるカエルが、自然界でも見つかっているそうだよ。
ミハル:でも、よく考えたら、実験3だけでは、正常発生でからだの前方の肢芽が翼を形成する仕組みに、調節タンパク質Xが本当に必要かどうか分からないよね。
ヒデヨ:それを証明するためには、調節タンパク質Xの遺伝子を、ニワトリのからだの( ア )の肢芽で( イ )、その部位で( ウ )が( エ )ことを確かめればいいんじゃないかな。
ミハル:なるほどね。次は、c肢芽ができるときに、どの辺りの細胞が分裂して増えるか調べる方法を考えてみようよ。
ヒデヨ:d正常発生で、わき腹で肢芽が形成されないようにしている仕組みにも興味があるね。
下線部aについて、次の記述a〜dのうち、正しい記述はどれか。その組合せとして最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
a 核に移動してDNAに結合するタンパク質の遺伝子である。
b 連鎖している遺伝子群である。
c 母性効果遺伝子(母性因子)である。
d バージェス動物群はまだ持っていなかったと考えられる遺伝子である。
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問題
大学入学共通テスト(理科)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問132(生物(第3問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)
マウスの前肢と後肢やニワトリの翼と脚など、四足(四肢)動物の肢は、肢芽と呼ばれるふくらみから形成される。肢芽は、胚の前後軸に沿った特定の部位に移動してきた側板由来の細胞が、表皮に覆われて形成される。形成された肢芽は伸長し、外胚葉と中胚葉の相互作用によって、それぞれの部位に特有の肢を形成する。このことを学んだミハルさんとヒデヨさんは、この仕組みについて議論した。
ミハル:肢芽がそもそもからだのどこに形成されるかは、どのaホックス(Hox)遺伝子がどの体節で働くかによって決まっているそうだよ。
ヒデヨ:だから、同じ鳥類でも、Hox遺伝子の発現の場所が異なることで翼が生じる場所が変わるから、首が長いものと短いものとがいるんだね。
ミハル:Hox遺伝子の発現する場所が変化しなくても、Hox遺伝子によって直接的または間接的に制御される遺伝子の発現や働きを変えることでも、肢芽が本来とは別の場所に形成されたり、その肢芽が翼や脚を形成したりしそうだよね。
ヒデヨ:それは面白そうだね。そういう論文があるか、図書館で調べてみよう。
ミハルさんとヒデヨさんは、図書館に行って、ニワトリ胚の肢芽で外胚葉と中胚葉の相互作用を変化させた実験1〜3を行った論文を見つけた。
実験1
肢芽が途中まで伸長した段階で、肢芽の先端の表皮を除去したところ、肢芽の伸長は停止した。しかし、表皮を除去した肢芽に、肢芽の先端の表皮から分泌されるタンパク質Wを染み込ませた微小なビーズを埋め込んだところ、肢芽は正常に伸長した。
実験2
本来は肢芽を形成しないわき腹の表皮の下に、タンパク質Wを染み込ませた微小なビーズを埋め込んだところ、わき腹に新たな肢芽が形成された。新たに形成された肢芽は、翼になる肢芽の近くにあると翼を、脚になる肢芽の近くにあると脚を形成した。
実験3
翼になる予定の前方の肢芽と脚になる予定の後方の肢芽との間で発現に違いのあるタンパク質を探したところ、前方の肢芽の側板由来の細胞から調節タンパク質Xが、後方の肢芽の側板由来の細胞から調節タンパク質Yが、それぞれ見つかった。実験2と同様にわき腹の中間に形成させた新たな肢芽で、調節タンパク質Xまたは調節タンパク質Yを発現させたところ、肢芽はそれぞれ翼または脚を形成した。
ヒデヨ:論文を読むと、b外胚葉と中胚葉の相互作用が変化することで2対の翼や2対の脚を持つニワトリができるのだから、形態形成の過程は想像以上に柔軟だということが分かるね。そういえば、この相互作用が邪魔されて2対の後肢が生えるカエルが、自然界でも見つかっているそうだよ。
ミハル:でも、よく考えたら、実験3だけでは、正常発生でからだの前方の肢芽が翼を形成する仕組みに、調節タンパク質Xが本当に必要かどうか分からないよね。
ヒデヨ:それを証明するためには、調節タンパク質Xの遺伝子を、ニワトリのからだの( ア )の肢芽で( イ )、その部位で( ウ )が( エ )ことを確かめればいいんじゃないかな。
ミハル:なるほどね。次は、c肢芽ができるときに、どの辺りの細胞が分裂して増えるか調べる方法を考えてみようよ。
ヒデヨ:d正常発生で、わき腹で肢芽が形成されないようにしている仕組みにも興味があるね。
下線部aについて、次の記述a〜dのうち、正しい記述はどれか。その組合せとして最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
a 核に移動してDNAに結合するタンパク質の遺伝子である。
b 連鎖している遺伝子群である。
c 母性効果遺伝子(母性因子)である。
d バージェス動物群はまだ持っていなかったと考えられる遺伝子である。
- a,b
- a,c
- a,d
- b,c
- b,d
- c,d
- a,b,c
- a,b,d
- a,c,d
- b,c,d
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