大学入学共通テスト(理科) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問126 (生物(第1問) 問1)
問題文
現在、多くの生物で絶滅のおそれが高まり、(a)生物多様性の低下が懸念されている。近年、植物種Xの生息地は分断され、(b)個体数が減少しつつある。植物種Xは多年生の草本で、地下茎により越冬し、翌年まで生存した個体は前年と同じ位置から地上部を出す。植物種Xには三つの生育段階(芽生え、幼個体、開花個体)があり、種子から発芽した芽生えは、成長すると翌年は幼個体になる。幼個体は数年をかけて成長して開花個体になり、一度だけ開花したのち、枯死する。
下線部(a)に関する記述として誤っているものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(理科)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問126(生物(第1問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)
現在、多くの生物で絶滅のおそれが高まり、(a)生物多様性の低下が懸念されている。近年、植物種Xの生息地は分断され、(b)個体数が減少しつつある。植物種Xは多年生の草本で、地下茎により越冬し、翌年まで生存した個体は前年と同じ位置から地上部を出す。植物種Xには三つの生育段階(芽生え、幼個体、開花個体)があり、種子から発芽した芽生えは、成長すると翌年は幼個体になる。幼個体は数年をかけて成長して開花個体になり、一度だけ開花したのち、枯死する。
下線部(a)に関する記述として誤っているものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
- これまで、適応放散が様々な系統において生じ、種多様性の増加に寄与してきた。
- かく乱は生態系を破壊するため、かく乱の規模が小さいほど、生物群集の種多様性が高い。
- 一部の生物が圧倒的に優占するのを捕食者が妨げることで、多くの種が共存でき、種多様性が高く保たれることがある。
- 遺伝的多様性が高い個体群は、生息環境が変化しても、その環境に対応して生存できる個体がいる可能性が高く、絶滅を免れやすい。
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題で覚えておくポイントは以下の通りです。まず、生物多様性とは動物、植物、微生物など様々な種を幅広く示したものです。問題文中では、特に植物における生物多様性について触れています。
まず、適応放散とはもともと同じ種だったものが進化とともに様々な種に分散していくことです。
よって、生態系における種が増えることにつながります。文中「種多様性の増加に寄与してきた」という結論は正しいと言えます。
かく乱とは地震や台風など気象条件によって引き起こされる天災を指します。
かく乱によって生物種を増加させる場合もあるため、誤りです。
生物ピラミッドに則って考えると、捕食者と被食者のバランスが保たれていることで多くの種が共存できることが分かります。よって正解となります。
遺伝的多様性の高い個体群の絶滅の免れやすさは正しいと言えます。
しかし、生物多様性は生態系種の広がりを指すものなので誤りと言えます。
この生物多様性に関する問題は、‘生物多様性’という単語の意味とそれが指す範囲を覚え、考えることが必要です。
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02
生物多様性は頻出分野の一つで、体系的な理解も重要ですが、用語暗記がその根幹にあります。
『適応放散』とは、根源にある同一の祖先から、隔離や種分化に応じ、その環境に適するように多様に進化していくことです。
このため、『種多様性の増加に寄与』の文はまさしく正しいといえます。
※『適応進化』は、『適応放散』とよく似た用語ですが、自然選択により環境に適した個体が生き残り、集団単位で環境に適していくことなので、まったく別の用語であることに留意する必要があります。
バトル漫画などで見る「敵をかく乱する」の表現するように、『かく乱』には「破壊・錯乱」のようなニュアンスがありますが、生物学においてはそこの生態系や環境を揺さぶるような「破壊」のことです。
わかりやすい例に、『遷移』の分野の「林冠が『陽樹』から『陰樹』に移り変わる」ことを考えてみます。
陽を好まない陰樹が、陽樹を押しのけて林冠に現れることはないが、陽樹の足元で低い背丈まで成長をしていた陰樹が、台風(破壊)や樹齢により陽樹が倒れるとすかさず、林冠を支配する。
このプロセスでわかることは、種多様性とかく乱の度合いの話です。
①台風という名の破壊が皆無な場合、(樹齢による倒木を例外として)陽樹による林冠は安定し、他の種の入る余地はないので、無論種多様性は小さくなります。
②次に破壊が中規模、その森林における半分が倒木する程度の場合、陰樹が成長し、林冠には陽樹と陰樹が半分ずつ入ることとなり、種多様性が大きいといえます。
③最後に破壊が超大規模、その森林の木がすべて倒れた場合、林冠は陰樹により満たされ、①と同様に種多様性は小さくなります。
よって種多様性とかく乱の度合いに反比例のような関係はなく、選択肢は誤りといえます。
※種多様性とかく乱の度合いのグラフは、『中規模かく乱説』と調べると比較的簡単に確認できます。
生態系の分野で一度は目にしたことがあろう、被捕食の関係を表したピラミッド。あれと全く同じように説明できます。
例えば、生産者、一次消費者、二次消費者の三段のピラミッドにおいて、一次消費者が『圧倒的に優占』(個体数を爆発的に増や)したとすれば、
まず、二次消費者の捕食により一次消費者が、一次消費者の捕食により生産者が、個体数を減らす。
このとき、二次消費者は個体数を増やすことになる。
次に増えた二次消費者は、捕食対象の一次消費者の減少によって個体数を減らし、生産者は同じく一次消費者の減少によって個体数を増やす。
そしてついに三種によるこの生態系は元の形に戻る。
ここで注目すべきは『まず、~』の行。これは『一部の生物が圧倒的に優占するのを捕食者が妨げ』たことであり、
結果元の種数を減らさずに、『種多様性を高く保たれ』たことになります。
よって正しいといえます。
これは進化論にもつながる話です。
ダーウィンの自然選択説の例としてよく扱われるキリンの話ですが、元からみんな首が長かったわけではなく、『多様』な首の長さのキリンがいたために、他の動物との競争の少ない高所の食料にありつける首の長いキリンが首の皮一枚繋ぎ、キリンという生物自体が『絶滅を免れ』たとされています。
まさにこの選択肢の例でしょう。
ところで、選択肢にも登場した『種多様性』、『遺伝的多様性』、そして『生態系多様性』にはもちろん違いがあります。
特に『種多様性』と『遺伝的多様性』は混同しがちですが、『種多様性』はガラパゴス諸島などで見られる鳥の話で、『遺伝的多様性』とは前述した首の長さの違うキリンの話です。
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03
適応放散、かく乱、キーストーン捕食者、遺伝的多様性について考えてみましょう。
まず、「適応放散」とは、ある祖先種が新しい環境に進出することで、複数の異なる形態・生態を持つ子孫種に急速に分化する現象です。
例えば、ガラパゴス諸島のフィンチ類は、食べるものによって、くちばしの形が異なります。
これは、魚類や鳥類、植物、昆虫など多くの系統で確認されています。
つまり、ある一種類の鳥から、木の実を食べる鳥・虫を食べる鳥・魚を食べる鳥に分かれ、時間が経過するごとに見た目や習性が異なる、新しい鳥の種類が出来るということです。
よって、適応放散が様々な系統において生じ、種多様性の増加に寄与してきた、というのは正しいです。
生態学でいう、「かく乱」とは、ある生態系や生物群集に突然の変化や破壊が起こることを指します。例えば、森林の小規模な倒木や火災、洪水、台風による一部の植物の倒壊です。
かく乱が全くないと、優占種(競争に強い種)が群集を支配し、弱い種は排除され、多様性は低くなります。
かく乱がある程度あると、優占種が一時的に減少し、他の種が生き残ることができ、多様性が最大になります。
かく乱が大規模にあると、ほとんどの種が生存できず、多様性は低くなります。
よって、かく乱の規模が小さいほど、生物群集の種多様性が高いというのは、誤りです。
これは、「キーストーン捕食者効果」のことです。
キーストーン捕食者とは、ある捕食者がいなくなると生態系全体のバランスが大きく崩れることです。捕食者は数が少ないが、生態系に対する影響がとても大きい種のことです。
キーストーン捕食者は、優勢な種の独占を防ぎ、弱い種にも生きる余地を与えることで、種の多様性を維持しています。
なので、「一部の生物が圧倒的に優占するのを捕食者が妨げることで、多くの種が共存でき、種多様性が高く保たれることがある」というのは、正しいです。
「遺伝的多様性」というのは、個体群の中で遺伝子の違いが多いことです。例えば、同じ人間でも髪や瞳の色、血液型の違い、植物の耐乾性など個体ごとに違いがあります。
全ての個体が同じ能力なら、環境が変化した際に絶滅する可能性があります。しかし、遺伝的に多様性が高いと、変化した環境に耐えられる個体が一定数存在する可能性があります。その結果、生息環境が変化しても、絶滅の危機を回避できます。
よって、遺伝的多様性が高い個体群は、生息環境が変化しても、その環境に対応して生存できる個体がいる可能性が高く、絶滅を免れやすい、というのは正しいと言えます。
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